マレーシア· マラッカ(ムラカ)とマレー半島· 東南アジアの食文化

グラ・ムラカ、筒形の砂糖と煙の香りの出どころ

筒形は型の跡。では、煙を思わせる香りはどこから来るのか。グラ・ムラカの樹液を煮詰める工程から、港町の名前と菓子メーカーの生産事情へ。形で分かること、表示で確かめたいことを整理する。

執筆日:文:ttr1563
グラ・ムラカ(初稿では画像本体とCommons APIを取得できず、画像内容・公開用ライセンスは未確認)
画像:Ahmad Shazlan / Wikimedia Commons(CC0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Gula_melaka.jpg

「マラッカの砂糖」という名前で、筒形の塊が売られている。グラ・ムラカだ。料理資料には、カラメルや煙を思わせる風味があるとも書かれている。地名、形、香り。どれも作られ方の手がかりに見えるけれど、資料を並べると、それぞれが教えてくれる範囲は違っていた。[名称と風味の解説](https://www.singaporeanmalaysianrecipes.com/gula-melaka/)

筒形には、煮詰めた樹液を受け止める型がある。一方、煙の香りをそのまま燃料の煙に結び付けたり、名前から発祥地を決めたりするには、根拠が足りない。まずは、いちばんはっきりと工程が残る形から見ていこう。

竹が決めるのは、煮詰めたあとの形

グラ・ムラカは、ヤシの樹液を煮詰めて作る砂糖だ。ココヤシを使う製法で集めるのは、実の中の水ではない。花がつく部分から採る甘い樹液である。食文化ライターのジェニファー・リーは、この液が発酵しやすいことも説明している。原料は初めから乾いた砂糖ではなく、採取後の扱いが大切な液体なのだ。[原料と採取の解説](https://jenniferangelalee.com/food-history-blog/gulamelaka)

その液を加熱し、水分を飛ばす。濃くなった糖液を型へ流し、冷まして固める。料理講師アズリン・ブルーアが挙げるのは竹の型だ。筒形は、砂糖が自然にその形へ育ったものではない。最後に流し込んだ容器の形を写している。[濃縮と成形の解説](https://www.singaporeanmalaysianrecipes.com/gula-melaka/)

竹と聞くと、その中で煮たり蒸したりする料理も連想するが、ここでの役目は成形だ。水分を飛ばす鍋と、形を決める型は、別の仕事をしている。この区別をつけると、四角い塊を見たときも、外形だけで別の原料だと判断せずに済む。後で触れるマラッカのメーカーも、需要に応じて商品の形や質感を増やしてきたと記している。料理資料の竹型と企業の沿革を合わせて読むと、形は製法の跡であると同時に、売り方に合わせて変えられる部分でもある。[メーカーの沿革](https://malasagulamelaka.wixsite.com/malaysia/about-us)

煙の香りは、どこまで説明できるか

形に比べると、香りの出どころはつかみにくい。ブルーアは煙を思わせる風味を挙げ、煮詰める間に独特の風味が育つと説明する。ただ、今回の資料では、燃料の煙と糖液の加熱が、それぞれ香りにどれほど関わるかまでは分からない。「煙を思わせる」と「煙でいぶした」の間には、まだ埋められない隔たりがある。[風味と製造工程の解説](https://www.singaporeanmalaysianrecipes.com/gula-melaka/)

原料にも、ひとくくりにできない点がある。リーはココヤシの花の部分から採る樹液を説明するのに対し、ブルーアはココヤシとサトウヤシを挙げる。説明の範囲が違うのであって、どちらか一方を選べばすべての商品を説明できるわけではない。「ヤシ糖」は手がかりになるが、商品名や筒形だけでは植物の種類まで確定できない。[リーの説明](https://jenniferangelalee.com/food-history-blog/gulamelaka)、[ブルーアの説明](https://www.singaporeanmalaysianrecipes.com/gula-melaka/)

使う側にとって確かな手がかりは、甘さに加えて香りも料理へ入ることだ。カラメルやトフィーを連想させる風味があるため、白砂糖から置き換えると、甘さだけを調整するつもりでも料理の印象が変わる。煙の強さを名前から決めつけるより、使う量を少しずつ調整するほうが、この砂糖をつかみやすい。

港の名前から、菓子メーカーの調達事情へ

グラ・ムラカは「マラッカの砂糖」を意味する名として説明される。ブルーアはマラッカ由来とされることに触れつつ、周辺地域にも同様の濃い色のヤシ糖があると記している。地名を含む名前は、発明の場所を証明する札とは限らない。[名称と地域について](https://www.singaporeanmalaysianrecipes.com/gula-melaka/)

その名前の背景には、15世紀のマラッカ王国から続く港の歴史がある。ユネスコは、海峡を通じた交易と文化交流が、食を含む多文化の暮らしに表れていると評価する。一方、リーはグラ・ムラカが香辛料や織物とともに海上交易で運ばれたと説明している。[ユネスコの都市史解説](https://whc.unesco.org/en/list/1223/)、[リーの交易に関する説明](https://jenniferangelalee.com/food-history-blog/gulamelaka)

ここは、二つの資料を重ねすぎないようにしたい。港で食文化が交わったことと、この砂糖がいつ、どこへ運ばれたかは、別の確かめ方を要する。リーの記事には個別の船積み記録が示されておらず、交易都市の歴史を、そのままグラ・ムラカの流通開始年代にはできない。

誰が、何のために作り方を変えたかを具体的に追えるのは、近年の企業の記録だ。マラッカのNRB Food Industriesは、2010年にグラ・ムラカを使うバナナチップの事業から出発したという。ところが、必要な砂糖の供給が安定しない。そこで自社生産へ進み、創業者夫妻による小規模な製造を経て、2012年1月にはマラッカのハラール産業地区で商業生産を始めた。[メーカーの沿革](https://malasagulamelaka.wixsite.com/malaysia/about-us)

同社は、消費者の需要に応じて形や質感を増やしたとも記す。一社の歩みではあるが、変化を動かした事情は明快だ。菓子に使う砂糖を安定して手に入れたい。その必要から、使い手が作り手になった。筒形の塊だけを眺めていては見えない、調達と商品づくりの歴史がここにある。

グラ・ムラカの選び方と使い方

買うときは、まず原材料表示で、何を原料にした商品なのかを確かめたい。筒形か四角かは、樹種を示す印ではない。表示に植物の種類がなければ、名前や見た目で補って判断しない。この見方は、資料ごとに原料の説明が異なったことともつながっている。

台所では、使う分をおろし器で削ると、大きな塊のままより溶かしやすい。ブルーアが紹介する下準備だ。まず飲み物に少しずつ加えれば、甘さとともに香りの変化も確かめられる。残りは包んで密閉し、熱と湿気を避け、商品の保存表示に従う。[使い方と保存の解説](https://www.singaporeanmalaysianrecipes.com/gula-melaka/)

甘味を選ぶなら、サゴのデザートや、グラ・ムラカを中に詰めたオンデオンデも候補になる。かける砂糖と、包み込まれた砂糖。同じ材料でも、どこに使われているかを見れば、食べ方の違いを追える。[甘味での用途](https://www.singaporeanmalaysianrecipes.com/gula-melaka/)

グラ・ムラカの筒形は、樹液を煮詰め、型に流して固めた跡だった。煙を思わせる香りは特徴として記されるが、その原因を燃料の煙だけに求めることはできない。マラッカの名も、発祥を確定する証拠にはならない。買うときは形より表示を確かめ、使うときは少し削る。塊の姿から分かることと、溶かして使うために必要なことは、こうしてつながる。

#東南アジアの食文化#マレーシア#グラ・ムラカ

Sources

参考資料・出典

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