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韓国の醤の暦を開く——オンギの甕と季節を読む人

初春、夏、初秋、冬。朝鮮時代の家庭には、季節ごとに仕込む醤があった。「呼吸する器」と呼ばれるオンギと、甕へ入る前の豆麹メジュから、空気と水分を扱う仕事をたどる。

執筆日:文:ttr1563
韓国・順天の楽安邑城の甕置き場に並ぶオンギ
画像:Bernard Gagnon / Wikimedia Commons(CC0) https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Jangdokdae_in_Naganeupseong_02.jpg

初春はタムブクチャン、夏はチプチャン、初秋はチョンテジャン、冬はチョングクチャン。韓国の国史編纂委員会が説明する朝鮮時代中期の食生活には、季節ごとに違う醤の名が並ぶ。長く熟成させて一年を通して備える醤もあり、家庭では保存する時間の異なるものを組み合わせていた。[国史編纂委員会の歴史解説](https://contents.history.go.kr/mobile/nh/view.do?levelId=nh_031_0060_0060_0020_0020_0030)

醤は韓国語でジャン。豆を使うペースト状のテンジャンや、液体のカンジャンなどがある。その発酵や保存を担ってきたのが、オンギと呼ばれる陶器だ。

「呼吸する器」という呼び名には、甕の中で季節が味を育てるような響きがある。けれど、季節ごとに仕込むものを選んでいたなら、そこには作り手の判断もあるはずだ。醤づくりで空気は何をし、人は何を調整してきたのだろう。

甕へ入る前に、稲わらが働く

空気との関わりを具体的に追えるのは、まずメジュを作る工程だ。メジュは、煮た大豆をつぶして塊にし、発酵・乾燥させたもの。日本語では豆麹と説明される。

2023年の『Journal of Ethnic Foods』の総説には、メジュを稲わらに置いたり、わらで結んで風通しのよい場所につるしたりする工程が記されている。わらの隙間が通風を助け、わらにいる微生物も発酵に関わるという。豆の塊を支えるものが、微生物の供給源にもなる。稲わらは、結びひも以上の役割を担っている。

ただし、乾かす速度は速いほどよい、とはいかない。総説は、乾燥が速すぎても遅すぎても発酵がうまく進まないと説明する。風を通す目的を「よく乾かすこと」だけで捉えると、この加減が抜け落ちる。乾燥と発酵を進めながら、水分をどう保つかが関わっている。[メジュと醤の製法を扱う総説](https://d-nb.info/131876727X/34)

伝統的な製法のうち、メジュを塩水に仕込んでから液体と固形分を分ける方法では、液体がカンジャン、固形分がテンジャンへつながる。売り場で別々に並ぶ二つの調味料に、共通の出発点がある。ただし、現在の製品には、この工程を共有しないものもある。

「呼吸」の一語では見えない甕の管理

Korea.netのオンギ解説は、屋上や玄関先に設けた場所で、発酵段階の異なる食品を熟成・保存していたと伝える。甕には大きさによる役割の違いもあり、大きなドクは醤の発酵に、小さなタンジは保存に使うと説明している。オンギという一つの言葉の中にも、仕込む器と保存する器の使い分けがある。[Korea.netのオンギ解説](https://www.korea.net/NewsFocus/Culture/view?articleId=119629)

ここで引っかかるのが、「呼吸する」という表現の読み方だ。今回の資料には、器壁を通る気体の量や、蓋を開ける頻度の具体的な説明はない。この呼び名から「いつも蓋を開けておく」とまで読み進めることはできない。

一方、メジュと醤の総説が挙げる発酵条件は、温度、水分、塩分、衛生など。国史編纂委員会の歴史解説にも、容器の選択と管理、温度、湿度、日照を見極める知識が登場する。両方を読むと、醤づくりでは空気に触れることだけでなく、食品の状態と周囲の条件を合わせて扱っていたことが見えてくる。[製法の総説](https://d-nb.info/131876727X/34)、[家庭の保存管理に関する歴史解説](https://contents.history.go.kr/mobile/nh/view.do?levelId=nh_031_0060_0060_0020_0020_0030)

メジュの通風について分かることと、甕そのものの通気について分かることには差がある。その差を残しておくほうが、器の呼び名だけでは見えない作業を追いやすい。

季節を読んだのは誰だったか

冒頭の醤の暦に戻ろう。朝鮮時代中期の家庭には、長く熟成させて常備するものと、季節ごとに仕込んで食べるものがあった。これは各地の全家庭が同じ日に同じ醤を作ったという意味ではない。それでも、醤の仕事を「年に一度、甕へ仕込んで待つ」とだけ考えるには、種類も時間も多い。

国史編纂委員会の解説は、容器や温湿度、日照についての知識を、家庭の女性たちが代々伝えたとする。ここで受け継がれていたのは、材料の組み合わせに加え、どんな器を選び、どう管理するかという判断だった。[国史編纂委員会「醤類とその他の食品の常備」](https://contents.history.go.kr/mobile/nh/view.do?levelId=nh_031_0060_0060_0020_0020_0030)

メジュの乾燥に加減が必要だという総説の説明と重ねると、季節に任せるという言葉の中身も変わる。季節は作り手が見極める条件であり、仕込みや管理を選ぶ手がかりだったと読める。甕のそばに必要だったのは、待つ時間と、その間の状態を判断する人だった。

1970年代以降、甕の置き場所が変わる

Korea.netは、1970年代以降にプラスチック、ガラス、金属の容器が入り、都市生活や働き方の変化とともに家庭のオンギ使用が減ったと説明する。現代には、醤などの発酵調味料を専用のキムチ冷蔵庫で保存する方法もある。[生活と保存容器の変化](https://www.korea.net/NewsFocus/Culture/view?articleId=119629)

屋上や玄関先の熟成場所と、家庭で継承された管理の知識。この二つを合わせて見ると、甕を使う暮らしには、器を置く空間と世話を担う人の時間が必要だったと分かる。容器の交代は、そうした家庭の条件の変化とも結び付いていた。

もっとも、家庭で使用が減ったことは、オンギが一斉に姿を消したことを意味しない。同じ解説は、調味料の工場や伝統料理店で使用が続くことも伝えている。醤の製造と保存をどこで担うかによって、甕の残り方は異なる。

醤の選び方:三つの表示を確かめる

醤を買うときは、まず名前を見る。「된장(テンジャン)」ならペースト状、「간장(カンジャン)」なら液体の調味料を探す手がかりになる。

次は原材料と製法の説明だ。「メジュ使用」「甕熟成」などの記載があれば、豆の塊を作る工程や、甕での管理と結び付けて読める。ただし、甕の写真だけでは製法や熟成期間までは分からない。知りたいことが書かれていなければ、販売店やメーカーへの確認項目にしよう。

最後は保存表示。購入後は商品の指示に従い、屋外での熟成をまねて蓋を開けたままにしない。製造中の管理と、買った後の保存は別の段階にある。

醤づくりで空気が果たす役割は、メジュの通風と乾燥に具体的に見える。その先の甕では、容器の選択とともに温湿度や日照などを見極める知識が受け継がれてきた。「呼吸する器」の一語では蓋の扱いまで決められないが、季節を読み、状態に合わせて管理する人の仕事はたどれる。買って帰った一品では、その保存表示が手元の管理の出発点になる。

#東アジアの食文化#韓国#発酵#オンギ

Sources

参考資料・出典

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